相反する立場の中で自分へ興味を移させる方法

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概要

 前半で、話すら聞いてくれない人を交渉可能な状態にまで持っていく関係性を築くのに有用なテクニック(作法)について触れた後に、後半で、作り上げた関係性を壊さずにこちらの提案を受け入れてもらえるようにするテクニック(作法)について触れます。

<相反する立場の中で関係性を築く方法>

 まず前半では、心理学的テクニックとして「無知の力」をキーワードに関係構築法について触れます。

 話すら聞いてくれない人=無関心である可能性もありますが、ここでは話すら聞いてくれない人≒極論保持者と想定します。

極論保持者の特徴:・積極的に正しい情報を探さないように行動する
         (客観的な知識が乏しいが、周りに扇動されて意固地になっている)
          ・もし正しい情報を伝えられた場合は、意固地になり、さらに否定的な態度が強くなる

 極論保持者との交渉においてで有用なテクニック「無知の力」について
 無知の力とは:持っている意見に対する客観的根拠が少ないことを理解すると、態度を軟化させること。 

 具体的関係性構築手法(相手に自身の持つ知識に偏りがあることを気づかせる具体的手法)
  1.相手が主張する内容を否定するのではなく、興味があることを示す。
    →相槌キーワードの繰り返しが効果的。対立ではなく相手に寄り添う姿勢を見せることを留意。
  2.「私が勉強不足なので、データまたは根拠を示していただけますか?」のような質問をする。
    ★重要★極論保持者に恥をかかせないように発言することを心がける。
        行いたいのは関係性の確立であり、相手を不快にさせるようなフレーズはNG。
         ※ 相手と私との関係性に関してはっきりさせずに、中立的な立場で質問すること 。
      質問の例:・どのデータに着目すれば私の考えを変えることができるでしょうか?
           ・どのようにすれば私たちの製品にご興味を持っていただけるでしょうか、
            頂いたご意見を反映させ、より良いものをもって改めて伺えればと考えて
            います。   など。
                       

この「無知の力」や「ゴールデンブリッジ(相手に恥を欠かせない信頼関係)」によって、話すら聞いてくれない人を交渉可能状態にまで持っていくことができる可能性が生まれます。

  3.交渉可能な状況までもっていったら、さらに歩み寄りの姿勢を示すように意識します。
    方法①「もし買い替えるとしたら…」と相手に想像させる質問をする。
      →この相手が何を重視しているかがわかり、商品改良のための要望サンプルが得られる。
    方法②対立ではなく一緒に理解を深める雰囲気に持っていく。
      →「商品Xは現状のトレンドにマッチしていると思いますか?ご意見をお聞かせください。」等
       商品を売りに来ているのは事実だが、ユーザー目線を取り入れようとしていることをアピール
    方法③結論を急がず、次回に持ち越す(★一番重要★)
      →「今はこの件を保留し、後で”私たち”がもっと情報を得てから、またお話をしましょう」

 ここで触れたテクニックのすべては、「道徳≒〇/×がはっきりしていないもの」には使えず、極論保持者がさらに意固地になるので注意が必要です。

<築き上げた関係をより強固にするTo Doリスト>

 後半では、前半で築き上げた関係性をより親密にする心理学的To Doリストについて触れます。


前提:営業目的で話している(お金目的で来ている)と感じると、顧客はそのセールスをブロッキングし、相手  
   にしない傾向がある。(築き上げた関係が水の泡…。)
    →関係破綻を避けるために、ブロッキングされている状況下でできるNot To doリストを紹介し、
     関係性をより良好なものに、また強固にする方法を紹介します。

【Not To doリスト】
1.頭の中で空想をしない
   マインドフルに相手の話を聴くことで、印象が良くなる。
   (セールスマンの印象は最初最悪。お金目当てで近づいてきているため。)
   ※マインドフル:「いま」、「ここに」集中すること。この場合では傾聴と同義。
2.頭の中で反論しない
   お互い接していて、コミュニケーションをしていく中で本来見えないははずの頭の中が見えてしまう。
    →そこで議論をしようとすると顧客は自身を否定されたように感じてしまう。
     私達の目的は、ともに歩んでいくことだったはず。相手を不快にさせるのはNGです。
     「議論」ではなく「疑問」モードで傾聴するのが良い、とされている。
3.ネガティブ感情に飲まれない
   相手の言動、態度等から威圧されていると感じている場合でも「客観的」であるように意識する
     対策①:クリティカルシンキング(情報を収集、分析して結論を出す能力のこと)の活用
          →相手が何を重視しているか、といった知見に見出す材料にする。(客観視の手法) 
     対策②:呼吸に着目して呼吸数を落とす。(興奮を抑える具体的手法)

4.アドバイスは商談の最後までしない
    いくら私たちが商材について深い知識があり、おすすめ商品を提示することを行いたくても
    決してやってはいけない。(相手は自分の意見・考え方を否定しているように感じているため)
5.単純な相槌を打たない
    「話を聞いている」ということを伝えるための相槌だが、単純なリズムでは無意味に。  
     →お客様の会話に対する相槌の合間でキーワードを繰り返す、というのも相槌に含まれ、
      これは関係性を強固にするために効果的です。
6.次の話を考えない
    マインドフルに相手の話を傾聴し、相手に共感することを求めることが重要。
    相手からの質問が見込まれる場合でも、それの準備をあらかじめ行うのではなく
    相手のニーズに共感を示しつつ、いま、この瞬間のコミュニケーションを図るのが肝要。
7.話の流れを変えない
    相手に共感し、傾聴していく中で自分の商品の話へと誘導することはNG.
    相手に共感する、ということはコミュニケーション内で出てきたキーワードを繰り返し、
    お互いの理解を合わせることが目的であり、セールスのフェーズではない。
8.不意打ちをしない
    相手の話の論理展開を否定しない。自分の製品をごり押ししない。
9.反対意見におびえない。
    ヒトというのは批判に対して敏感である。また、この感情は見抜かれやすいので批判におびえるので
   はなく、客観性を身に着け、改善していくように意識するのが良い(≒クリティカルシンキング)

<おわりに>

 前半、後半ともに100%の確度で有用である、とは言えず、むしろここで紹介したテクニックはセールスマンに限らず社会人全員が身につけるべき「リテラシー」に近いものです。とはいえ実のところ、私(執筆者)は上記を全てできていたか、と言う点では「十分にできていなかったテクニックが一部ある」といった状況でした。そこで、ここでリテラシーとして公開することで、「なんとなく意識している状態」から「猛烈に意識する状態」へと段階を上げることで、より効果的に身につけられるのではないか、というメッセージを添えて本記事を終えたいと存じます。


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